不動産を売却した時にかかる税金対策

今回は「不動産を売却した時にかかる税金対策」についてお話します。

家を買うのは一生に一度の最大の買い物」という時代から、住み替えてステップアップしていく!という方も多く見受けられます。
不動産は価格が高いため、売却した際の税金を把握しておかないと、大変な思いをする可能性があります。
ただ、特例制度もいろいろありますので、その制度をうまく利用することが重要です。

さて、不動産を売却した時の税金ですが、誰がどの程度不動産を売却したかで税金の種類や課税内容が変わります。
まず、その分類を記載します。
1.個人(会社勤め等一般の方)が土地・建物を売却した場合
→譲渡所得に対する所得税及び住民税(長期保有、短期保有により税率が変わります。)
2.個人の不動産業者(会社組織でないもの)が商品である土地を売った場合
→事業所得に対する所得税及び住民税
3.法人(有限・株式会社等で不動産会社に限らない)が土地を売却した場合
→法人税及び住民税
今回は上記1.の「個人が居住用の土地・建物を売却した場合」について、以下①〜⑩の項目で書きたいと思います。

居住用住宅を売却した場合

① 所有期間が5年以下の場合

→下記⑴,⑵が適用になります。
⑴ 3,000万円の特別控除→居住用財産の譲渡をした場合に3000万円まで譲渡益から控除されるというものです。
また、長期保有(5年超)、短期保有(5年以下)に関係なく利用できます。
尚、収用等の特別控除または買換えなどの他の特例の適用を受ける場合やこの特例の適用を受けるためのみの目的で入居したと認められる場合には適用されません。
また、以下の項目を満たせば、更地で売却しても3,000万円の特別控除が受けられる場合があります。(この特別控除は災害等により住宅が滅失した場合以外は、還俗として敷地のみの譲渡には適用されないこととされていますが、下記a.b.の要件の全てを満たした場合には、3,000万円の特別控除が認められます。)
a.その敷地の譲渡に関する契約が住宅を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、その住宅の居住の用に供さなくなった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までにその敷地を譲渡した場合。
b.その住宅を取り壊した後、譲渡に関する契約を締結した日まで、その敷地を貸付等の業務の用に供していないこと。
また、上記a.b.の要件を満たすことに加え、その敷地の所有期間がその住宅を取り壊した年の1月1日において10年を超える場合には、後述(⑦の⑵参照)「所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例」の適用を受けることができます。

【共有名義の利点】・・・住宅とその敷地のそれぞれを夫と妻との共有名義で登記し、夫婦で居住用に使用しているものであれば、これを売却した際、夫と妻それぞれの持分について3,000万円の特別控除が受けられます。
【例1】夫婦で土地を3,000万円で購入し、建物(木造)を2,000万円で建て、土地建物共に1/2ずつの共有持分にして、30年が経ちました。
売却した時の金額が9,000万円だった場合の控除額は・・・
→土地は減価償却されないので、取得費3,000万円は売却の9,000万円からそのまま引けます。
建物は減価償却されますので、取得費2,000万円×0.9×0.031×30(経過年数)=1,674万円
2,000万円-1,674万円=326万円
土地取得費3,000万円+建物取得費(減価償却後)326万円=3,326万円が売却金額より引けます。
9,000万円-3,326万円=5,674万円
特別控除の合計6,000万円>5,674万円
※よって、譲渡益が出ない計算になります。

【例2】夫が土地を3,000万円で購入し、夫婦で建物(木造)を2,000万円で建て、土地は夫、建物(木造)は夫婦1/2ずつの共有持分にして、30年が経ちました。
売却した時の金額が9,000万円だった場合の控除額は・・・
→土地は減価償却されないので取得費3,000万円は売却の9,000万円からそのまま引けます。
建物は減価償却されますので、取得費2,000万円×0.9×0.031×30(経過年数)=1,674万円
2,000万円-1,674万円=326万円
土地取得費3,000万円+建物取得費(減価償却後)326万円が売却金額より引けます。
9,000万円-3,326万円=5,674万円
ここまでは一緒です。
次に、売買の際、土地と建物の価格を按分します。
土地3,000万円、建物2,000万円で購入していますが、按分する際は購入時の比率のまま、というわけにはいかないようです。
建物価格を出すには3つの方法があります。
a.売却した時の建物の原価率(この場合は326万円)
b.土地と建物の固定資産税評価額の割合で按分する。
c.土地の相続税評価額を求めて、土地の金額を確定し、残りを建物価格にする。
仮にa.の場合で計算すると、売買価格9,000万円に対して、土地8,674万円、建物326万円となります。
夫は、土地8,674万円のうち、取得費3,000万円が引けますので、5,674万円の譲渡益が出ます。
建物に関しては、326万円が対象金額となります。
夫は建物326万円のうち、1/2の163万円が持分ということになるので、土地の譲渡益8,674万円+建物の持分163万円=5,837万円の譲渡益が出ます。
ここから居住用財産を売却した場合の特別控除3,000万円を差し引くので、最終的に夫は、2,837万円の譲渡益が出ることになります。
妻は土地の名義が入っていないので、建物価格の1/2の163万円が対象になります。
ここから居住用財産を売却した場合の特別控除3,000万円を差し引き、妻分の譲渡益が0になりますが、妻は特別控除額を満額使えないということになります。
よって、a.場合は、夫に譲渡益が2,837万円出るという計算になります。
この他、b.の固定資産税評価額での按分の方が建物価格が高い場合、または土地の相続税評価額が低く抑えられ、建物価格がa.よりも高い場合等、a.よりも有利であればそちらを選択されても問題ないようです。
売却時の建物価格をいくらにするかは、上記a.b.cのいずれかでご自身に最も有利な方法を選択していただければと思います。
(注1)個人であっても消費税がかかる方がいらっしゃいますので、その場合は税理士・会計士等にご相談ください。

(注2)建物償却の計算は木造住宅の場合です。
軽量鉄骨(鉄骨の厚みによって異なる)、鉄筋コンクリートは償却率が違いますので、ご注意ください。

【対策1】居住用の場合は、短期(5年以下)であってもこの特例を使えますので、永住目的で購入したが、転勤等で売却せざるを得ない可能性がある場合等、早々に売却する可能性があるのであれば、共有名義にしておくのもいいと思います。
ただ、これは購入時に判断しなければならず、また名義を入れる場合は実態(実際に名義人がお金を負担する)が伴わないといけません。
ただし、年間110万円までの贈与非課税分を毎年譲渡することはできます。
売却時にタイミングよく妻(夫)の持分が増えていればその分控除対象になります。
ただし、上記のように大幅に譲渡益が出るパターンは都内等一部の地域に限られると思われ、地方ではまず譲渡益が出ない可能性が高いと思われますが、不動産を売却した時にかかる税金対策は購入時から考えておく必要があります。
あらゆる想定をして、ご自身にベストな方法をご選択ください。
この他、いろいろなケースがあると思われますので、名義をどうするかは、税理士・会計士・不動産会社等に相談の上、ご自身に最適の方法をご選択ください。

⑵ 短期譲渡所得の税金→(所有期間5年以下)にかかる税金のことで、課税短期譲渡所得金額に39%(所得税30%・住民税9%)の税率を乗じて計算されます。
尚、復興特別所得税として平成25年より所得税額の2.1%が別途かかります。

【例3】譲渡益が1,000万円出た場合(例えば3,000万円で購入した不動産が4,000万円で売れた場合・・・所有期間が5年以下→短期譲渡所得)

1,000万円×30%=3,000,000円(譲渡所得税額)
300万円×2.1%=63,000円(特別復興所得税)
1,000万円×9%=900,000円(住民税)
合計=3,963,000円となります。

計算式は「課税短期譲渡所得金額×39.63%」で所得金額と住民税の合計が出ます。

② 所有期間が5年を超える(買換えない場合で譲渡損が出た場合)

→居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例が適用されます。
個人が自分の住まいである土地、建物を譲渡して損失が出た場合、買換えをしなくても、譲渡損失の金額のうち住宅借入金等の金額からその譲渡資産の譲渡価格を控除した残額を限度として、他の所得と通算及び翌年以後3年間の繰越控除ができる制度です。
この特例の適用を受ける場合の要件は次の⑴〜⑷です。
⑴ 個人が平成16年1月1日から令和元年12月31日までの間に、その有する家屋またはとちでその年1月1日に置いて所有期間が5年を超える居住用財産で以下のa~dのいずれかに該当するものを譲渡すること。
a.現に自分が住んでいる住宅
b.以前に自分が住んでいた住宅で自分が住まなくなった日から3年後の12月31日までの間に譲渡されたもの
c.aやbの住宅及びその敷地
d.災害によって滅失したaの住宅の敷地で、その住宅が滅失しなかったならば、その年の1月1日における所有期間が5年を超えている住宅の敷地
※ただし、その災害があった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡されるものに限ります。
⑵ その個人がその譲渡にかかる契約を締結した日の前日においてその譲渡資産にかかる一定の住宅借入金等の金額を有すること
⑶ 繰越控除する各年分の合計所得金額が3,000万円以下であること。
⑷ 譲渡先が、その個人の配偶者その他特別の関係がある者ではないこと。

③ 所有期間が5年を超える(買換えない場合で譲渡益が出た場合)

→下記⑴,⑵が適用されます。
⑴ 3,000万円の特別控除→居住用財産の譲渡をした場合に3000万円まで譲渡益から控除されるというものです。
また、長期保有(5年超)、短期保有(5年以下)に関係なく利用できます。
※収用等の特別控除または買換えなどの他の特例の適用を受ける場合やこの特例の適用を受けるためのみの目的で入居したと認められる場合には適用されません。(上記①の⑴と同じ)
⑵ 長期譲渡所得の税金→(所有期間5年超)にかかる税金は、課税長期譲渡所得金額に、一律20%(所得税15%・住民税5%)の税率に乗じて計算されます。
尚、復興特別所得税として平成25年より所得税額の2.1%が別途かかります。

【例4】譲渡益が1,000万円出た場合(例えば3,000万円で購入した不動産が4,000万円で売れた場合・・・所有期間が5年以上→長期譲渡所得)

1,000万円×15%=1,500,000円(譲渡所得税額)
200万円×2.1%=31,500円(特別復興所得税)
1,000万円×5%=500,000円(住民税)
合計=2,031,500円となります。

【対策2】 上記【例2】と前述の短期譲渡所得税【例1】を比較すれば一目瞭然ですが、長期譲渡所得税は短期譲渡所得税の約半分程度で済みます。
譲渡益が出る場合で、購入して5年以下の方で、早急に売却する必要がない場合は、所有期間5年超えてから売却したほうがいいでしょう。
居住要財産であれば物件価格が3,000万円までは譲渡益から控除されますので、物件価格が3,000万円以内なら、5年を待つ必要はありません。
急いで売却したい方は、まず、相場を確認しましょう。
又、不動産の売却の際、居住用であるか否かに関わらず、売却価格が購入時の価格を下回る場合で、かつ建物の減価償却後の残額を差し引いても売買価格の方が低い場合は、当然譲渡益は出ませんので、税金はかかりません。
購入時の契約書及び領収証等の存在を確認しましょう。(証明するものがないと税金がかかる可能性があるのでご注意ください。)

※詳細は税理士・会計士・税務署・県税事務所・市区町村の役所等、税金を専門に扱う方々、部署にご確認ください。

④ 所有期間が5年を超える(買換える場合で譲渡損が出た場合)

→居住用財産の買換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例が適用になります。
・特例を受けるための要件
個人が、土地、建物を譲渡して損失が発生した場合には、通常はその損失分を他の所得(給与所得・事業所得等)から控除したり、繰越して控除したりすることはできません。(他の所得の損失を土地、建物の譲渡益から控除することもできません。)
しかし特定の居住用財産の譲渡損失についてだけ、その年の他の所得から控除(損益通算)することができ、更に控除しきれなかった残額のある時は、その残額をその翌年から3年間に繰越して各年の給与、事業所得等の総所得金額(合計所得金額が3,000万円以下)の年分に限る)から控除できます。
この特例の適用を受けられるのは、次の要件を備えた居住用財産の譲渡損失です。
尚、その敷地の面積が500㎡を超える場合は、その超える部分に対応する損失は除外されます。
※この繰越控除は、住宅ローン控除との併用も認められています。
【要件の内容1】・・・譲渡資産
令和元年12月31日までの間に譲渡される自己の居住のように供する家屋又はその敷地で、その譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるもののうち、次のa〜dのいずれかに該当するもの。
a.現に自分が住んでいる住宅
b.以前に自分が住んでいた住宅で自分が住まなくなった日から3年後の12月31日までの間に譲渡されたもの
c.aやbの住宅及びその敷地
d.災害によって滅失したaの住宅の敷地で、その住宅が滅失しなかったならば、その年の1月1日における所有期間が5年を超えている住宅の敷地
※ただし、その災害があった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡されるものに限ります。
【要件の内容2】・・・買換資産
⑴ 譲渡資産を譲渡した年の前年の1月1日から譲渡した年の12月31日までの間に居住用の住所やその敷地を取得すること。
⑵ その家屋の居住部分の床面積が50㎡以上であること。
⑶ その取得した日から取得した年の翌年の12月31日までの間に自己の居住の用に供すること、または今日する見込みがあること。
⑷ 繰越控除を受けようとする年の12月31日において、買換資産に係る住宅借入金等(返済期間10年以上のローン契約等によるもの)の金額を有していること。
・譲渡損失の損益通算の計算
その年に特定の居住用財産の譲渡の他に、土地建物の譲渡があって、その譲渡益がある場合には、その譲渡益から控除し、次に土地建物いたの譲渡所得、次に一時所得からそして利子所得、配当所得(以上のうち源泉分離課税を適用したものを除く)、不動産所得、事業所得、給与所得、雑所得から控除し、更に山林所得、退職所得の金額から控除するようにして計算します。
・譲渡損失の繰越控除の計算
繰越控除が適用される譲渡資産に係る譲渡損失の金額とは、譲渡資産に係る譲渡所得の計算上生じたその年の損失額のうち「上日した損益通算をしても尚控除しきれない部分の損失とされています。
譲渡収入ー取得ひー譲渡費用=譲渡所得に係る損失額(赤字の額)
他の所得金額ー譲渡所得にかかる損失額=譲渡損失の金額(控除しきれない損失額)
↑繰越控除の対象となる金額

⑤ 所有期間が5年を超える(買換える場合で譲渡益が出た場合)

→上記③と同じ内容となります。

⑥ 所有期間が10年を超える(買換えない場合で譲渡損が出た場合)

→上記②と同じ内容となります。

⑦ 所有期間が10年を超える(買換えない場合で譲渡益が出た場合)

⑴ 3,000万円の特別控除→居住用財産の譲渡をした場合に3,000万円まで譲渡益から控除されるというものです。
また、長期保有(5年超)、短期保有(5年以下)に関係なく利用できます。
※収用等の特別控除または買換えなどの他の特例の適用を受ける場合やこの特例の適用を受けるためのみの目的で入居したと認められる場合には適用されません。(上記①の⑴と同じ)
⑵ 居住用財産の譲渡に係る軽減税率の特例が適用になります。
→この制度は、個人がその年の1月1日において所有期間が10年を超える次の居住用財産の譲渡をした場合に適用されます。
a.現に自分が住んでいる住宅
b.以前に自分が住んでいた住宅で自分が住まなくなった日から3年後の12月31日までの間に譲渡されたもの
c.aやbの住宅及びその敷地
d.災害によって滅失したaの住宅の敷地で、その住宅が滅失しなかったならば、その年の1月1日における所有期間が5年を超えている住宅の敷地
※ただし、その災害があった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡されるものに限ります。

⑧ 所有期間が10年を超える(買換える場合で譲渡損が出た場合)

→上記④と同じ内容となります。

⑨ 所有期間が10年を超える(買換える場合で譲渡益が出た場合)

→居住期間が10年以上等一定の要件を満たすもの
・特例を受けるための要件→この特例の適用が受けられるのは、令和元年12月31日までの間に居住用の住宅やその敷地を売った場合で、譲渡資産(売った居住用の住宅やその敷地)及び買換資産(購入した居住用の住宅やその敷地)が、次の要件に該当する場合です。
【要件の内容1】・・・譲渡資産
次に掲げる居住用財産で、その譲渡した年の1月1日における所有期間が10年を超えているもので、譲渡にかかる大火が1億円以下のもの。
⑴ 現に自分が住んでいる住宅で、居住期間が10年以上であるもの。
⑵ 以前自分が住んでいた上記(1)の住宅で、自分が住まなくなった日から3年後の12月31日までに譲渡されるもの。
⑶ (1)や(2)の住宅及びその敷地。
⑷ 災害によって(1)の住宅が滅失した場合において、その住宅を引き続き所有していたとしたならば、その年の1月1日における所有期間が10年を超えるその十歌くの敷地(その災害があった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡されるものに限ります。)
【要件の内容2】・・・買換資産
⑴ 譲渡資産を譲渡した年の前年の1月1日から譲渡した年の12月31日までの間に居住用の住所やその敷地を取得すること。
→(注) 上記については、確定申告書に買換資産明細書を添付することにより、譲渡した年の翌年12月31日まで1年間延長することができます。
⑵ 譲渡資産を譲渡した年の翌年12月31日までの間に、取得した住宅を居住の用に供すること、または供する見込みであること。
→⑴の(注)で取得期限延長の適用を受けている場合は譲渡資産を譲渡した年の翌々年の12月31日までに、取得した住宅の用に供すること、または供する見込みであること。
⑶ 取得する住宅は、床面積が50㎡以上であること。
⑷ 買換資産が中古の耐火建築物である場合には、その中古耐火建築物が新築後25年以内であるか、又は新耐震基準に適合することが証明されたものであることもしくは、既存住宅売買瑕疵担保責任保険に加入していること(その家屋の取得の前2年いないに契約の締結をしたものに限ります。)
買換資産が非耐火既存住宅の場合には、新築後25年いないであるか、又は地震に対する安全基準を満たすものであること(取得期限までに改修等を行って耐震基準に適合すれば適用できます。)
⑸ 取得する敷地は、その面積が500㎡以下であること。
上記に該当しないもの
⑴ 3,000万円の特別控除→「①の⑴」参照。
⑵ 居住用財産の譲渡に係る軽減税率の特例
→この制度は、個人が、その年の1月1日において所有期間が10年を超える次の居住用財産を譲渡した場合に適用されます。
a.現に自分が住んでいる住宅。
b.以前に自分が住んでいた住宅で、自分が住まなくなった日から3年後の12月31日までに譲渡したもの。
c.aやbの住宅及びその家屋とともに譲渡された敷地。
d.災害によって滅失したaの住宅の敷地で、その住宅が滅失しなかったならば、その年の1月1日における所有期間が10年を超えている住宅の敷地。但し、その災害があった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡したものに限ります。
※この特例は、3,000万円特別控除とセットで利用することができ、所有期間10年超という条件以外は、3,000万円特別控除の要件と同じです。
【計算方法】
・3,000万円特別控除後の譲渡所得のうち6,000万円以下の部分・・・10%(他に住民税4%)
・3,000万円特別控除後の譲渡所得のうち6,000万円を超える部分・・・15%(他に住民税5%)
※尚、平成25年より復興特別所得税として、所得税額の2.1%が別途かかります。

【対策3】 対策というほどではないですが、注意すべき事項を記載します。
一般的に不動産を売却した場合は譲渡所得税と住民税の記載ばかりですが、保険料が上がる可能性があります。
特に、国民健康保険料、介護保険料、その他所得が上がった場合にかかる市町村役場から徴収されるものに関しては軒並み上がりますので、そのあたりも事前にご確認ください。
税理士・会計士に確認する際に、「不動産を売却した際にかかる税金を教えてください。」と尋ねた場合は、譲渡所得税・復興特別所得税・住民税のことしか通常は教えてくれませんので、もし、市区町村の役所からの保険料等の負担が増えるかどうかも併せて確認しましょう。

⑩相続等により取得した被相続人の居住用家屋等(空家)を譲渡して譲渡益が出た場合

→相続によって取得した居住用の空家を譲渡した場合の特別控除の特例があります。
これは、空家の放置により周辺環境へ悪影響を防止する、又は空家を有効活用を促進するため、空家が発生する最大の要因である「相続」によって取得した古い空家(昭和56年5月31日以前に建てられた住宅)を売却した場合、更に下記の他の【要件の内容1〜6】を満たせば、居住用財産の3,000万円特別控除が適用されるというものです。
但し、昭和56年5月31日以前の建築物は旧耐震の建物ですので、そのまま売却できず、耐震リフォームをして新耐震基準を売主側で満たしてから譲渡しないとこの特例は適用されませんが、売主側で解体更地にしてから譲渡すれば適用されます。

【要件の内容1(家屋の要件)】
⑴ 相続の開始の直前において被相続人がその家屋を居住の用に供していたこと(被相続人が相続開始直前においてその家屋に居住していない場合であっても、以下の要件を満たす場合には、特例の適用が可能です。
a.被相続人が介護保険法に規定する要介護認定等を受け、相続開始の直前まで老人ホーム等に入所していたこと。
b.被相続人が老人ホーム等に入所した時から相続の開始直前まで、その家屋について被相続人による一定の使用がなされ、かつ、事業の用・貸付の用または被相続人以外の者の居住のように供されていないこと。

⑵ 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること。
⑶ 区分所有建築物(マンション等)意外の家屋であること。
⑷ 相続の開始の直前においてその被相続人以外に居住していた者がいなかったこと。
⑸ 相続の時から譲渡の時まで、事業の用・貸付の用または居住の用に供されていたことがないこと(相続した家屋を取り壊して土地のみを譲渡する場合には、取り壊した家屋について相続の時から譲渡の時まで、事業の用・貸付の用または居住の用に供されていたことがないこと、かつ、土地について相続の時からその譲渡の時まで事業の用・貸付の用または居住の用に供されていたことがないこと)
【要件の内容2(相続人の要件)】
⑴ 上記の【要件の内容1(家屋の要件)】の家屋及びその敷地を相続または遺贈(死因贈与を含む)により取得をした相続人
【要件の内容3(適用期限)】
⑴平成28年4月1日から令和5年12月31日までの間で、かつ、相続の時からその相続の開始があった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡したものに限られます。
既に相続が発生している場合には、平成28年1月2日以後の相続から適用となります。

相続の発生                譲渡の適用期限
平成28年1月2日〜平成29年 1月 1日  → 〜 令和元年12月31日
平成29年1月2日〜平成29年 1月 1日  → 〜 令和 2年12月31日
平成30年1月2日〜平成29年 1月 1日  → 〜 令和 3年12月31日
平成31年1月2日〜令和 2年 1月 1日  → 〜 令和 4年12月31日
令和 2年1月2日〜令和 3年 1月 1日  → 〜 令和 5年12月31日
令和 3年1月2日〜令和 4年 1月 1日  → 〜 令和 5年12月31日
令和 4年1月2日〜令和 5年 1月 1日  → 〜 令和 5年12月31日
令和 5年1月2日〜令和 5年12月31日  → 〜 令和 5年12月31日

※この項目の上記【要件の内容1(家屋の要件)】に記載されている被相続人が老人ホームに入所していた場合については、平成31年4月1日以後の譲渡に限り適用対象となります。
→平成31年4月1日前までは、被相続人が売却する不動産の住所から移転していた場合は老人ホームであっても適用除外されていました。
【要件の内容4(譲渡する際の要件)】
⑴ 譲渡価格が1億円以下(相続の時からその譲渡をした日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に2回以上に分けて譲渡した場合は合計1億円以下であること)
⑵ 家屋を譲渡する場合(その敷地の用に供されている土地等も併せて譲渡する場合も含む)、その譲渡時において、その家屋が現行の耐震機銃に適合するものであること。
【要件の内容5(他の特例との適用関係)】
⑴ 同一年内に空家と自己の居住用財産を譲渡した場合には、併用が可能ですが、3,000万円が限度となります。
また相続後3年以内に土地建物等の相続財産を譲渡した場合に、相続税額相当額を譲渡資産の取得費に加算できる特例とは選択制となります。
自己の居住用財産を譲渡して、特定の居住用財産の買換え特例を選択する場合は併用が可能です。
【要件の内容6(手続)】・・・この特例は、確定申告書に下記の書類の添付がある場合に適用されます。
⑴ 家屋または家屋及び敷地等を譲渡する場合
a.譲渡所得の金額の計算に関する明細書
b.被相続人居住用家屋及びその敷地等の登記事項証明書等
c.被相続人居住用家屋及びその敷地等の売買契約書の写し等
d.被相続人居住用家屋等確認書(次項目の被相続人居住用家屋証明書の交付を受けるために必要な書類参照)
e.被相続人居住用家屋の耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し
⑵家屋を取り壊し、除去または滅失後の敷地等を譲渡する場合
a.上記⑴のa.b.d.と同じ
b.敷地等の売買契約書の写し等

上記⑩の【要件の内容6(手続)】のd.の「被相続人居住用家屋証明書の交付を受けるために必要な書類参照」について詳細を記載します。

こちらの書類は、被相続人居住用家屋が存在する市区町村に提出して交付を受けます。
⑴ 家屋(及びその敷地)等を譲渡する場合
a.被相続人の住民票の除票の写し
b.被相続人居住用家屋の譲渡等の相続人の住民票の写し
c.家屋またはその敷地等の売買契約書の写し
d.以下の書類のいずれか
❶電気、水道、ガスの使用中止日が確認できる書類(支払証明書、料金請求書、領収証等)
❷宅建業者が「現況空家」と表示した広告の写し
❸その他、要件を満たすことを容易に認めることができる書類(市区町村が認める者がその家屋の管理を行っていたことの証明書)
⑵ 家屋の取り壊し後の敷地等の譲渡の場合
a.被相続人の住民票の除票の写し
b.被相続人居住用家屋の譲渡等の相続人の住民票の写し
c.その敷地等の売買契約書の写し
d.以下の書類のいずれか
❶電気、水道、ガスの使用中止日が確認できる書類(支払証明書、料金請求書、領収証等)
❷宅建業者が「現況空家」かつ、「取り壊し予定とある」と表示した広告の写し
❸その他、要件を満たすことを容易に認めることができる書類(市区町村が認める者がその家屋の管理を行っていたことの証明書)
❹法務局が作成する家屋の除去工事に係る請負契約書の写し(閉鎖証明書が提出できない場合、被相続人居住用家屋の除去工事に係る請負契約書の写し)
❺その家屋の取り壊し、除去または滅失の時から譲渡の時までの被相続人居住用家屋の敷地等の使用状況がわかる写真
⑶ 被相続人が相続の直前において老人ホーム等に入所していた場合
→上記⑴または⑵の書類に加えて、以下の書類が必要となります。
a.被相続人の介護保険書の写しまたは傷害福祉サービス受給者証の写し
b.被相続人の住民票の除票の写し
c.その老人ホーム等への入所時の契約書等の写し
d.被相続人居住家屋の譲渡時の相続人の住民票の写し
e.以下の書類のいずれか
❶電気、水道、ガスの使用中止日が確認できる書類(支払証明書、料金請求書、領収証等)(再掲)
❷老人ホーム等が保有する外出、外泊等の記録
❸その他、要件を満たすことを容易に認めることができる書類(家屋を宛先住所とする被相続人当ての郵便物等)

【対策4】これらの手続きはかなり面倒なので、基本的には不動産会社に任せた方がいいと思います。
上記にも記載しましたが、親が老人ホームに入って、住民票が移転していた場合は、平成31年3月31日まで適用外でしたが、平成31年4月1日からこの部分が緩和されました。
このように内容も変わる可能性がありますので、随時税務署、市区町村の役所等に確認していただくことをお勧めします。
平成30年時点では、平成28年4月1日〜平成31年(令和元年)12月31日までの適用でしたが、現在、令和5年12月31日まで延長されています。
その他の項目も変更される可能性がありますので、年度変わりには関係各所に確認されることをお勧めします。

とういうことで「不動産を売却した時にかかる税金対策」について、でした。

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